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医療的ケア児の保育所問題

 からふるの児童発達支援には保育所と並行通園しているお子さんがいます。卒園生の中にも保育所やこども園に通うようになり、ぐんと成長した子がたくさんいます。保護者の就労等による保育の必要性のみならず、就学までの間に地元の同年齢集団の中で生活する経験は、どの子どもたちにとっても必要な体験だと実感します。

 しかし残念ながら、医療的ケアがあったり重い障がいがあると、保育所や幼稚園への入園に制約が生じることが多々あります。加配の保育士さんやケアを担ってくれる看護師さんが見つからないと入園できないといったことも珍しいことではありません。


 昨年「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律(医療的ケア児支援法)」が施行され、保育所や学校での医療的ケア児の受け入れに対する国や自治体、保育所や学校等の設置者の責務が規定されました。実際の運用はまだまだこれからの部分が多いですが、自治体の責務が法律に明文化されたことで、私たちも大きな武器を手に入れたような強い気持ちになっています。

 法律ができてから、からふるにも国会議員さんや市会議員さんが何人か話を聞きに来てくださいました。心強い味方ができた気持ちにもなりました。


 実はからふるが開所して間もないころ、ある公的な会議の中で一部の自治体関係者が「保育園に医療的ケアのあるような怖い子たちを受け入れるなんてとんでもない!」と発言され、驚いたことがあります。

 当時はまだ私も地域の実情をよく理解していたわけではありませんでしたが、この時ばかりは「怖い怖いって言わないでください! 私たちだって簡単だと思って支援しているわけではない!」と反論しました。公的な場であまりの無理解発言に心折られた初めての体験でした。


 他にも、からふるには時々サービス提供地域外からのお問い合わせが来ることがあるのですが、数年前に「行政の人に『医療的ケア児を育てているのに働きに出るんですか?』と言われて、保育所なんてとんでもないと断られた。でも経済的にどうしても働かないといけない。毎日送迎するのでからふるさんで受け入れてもらえないか?」などという耳を疑うようなお問い合わせが来たことがあります。

 からふるの児童発達支援のサービス提供時間は10時~13時なので、とても保育所の代替手段にはなりえません。そのお問い合わせには応えることができず、近隣の医療的ケア児を受け入れておられる事業所さんの情報を紹介させていただくにとどまってしまいました。


 そこまでのひどい話はないにしても、からふるの子どもたちの中にも保育所入園がかなわず、保護者が退職に追い込まれたケースがあります。あからさまに「入園の申請をしても難しいと思いますよ」というようなことを言われている保護者は1人2人ではありません。


 また支援学校に通う子どもたちも医療的ケアの程度によってはスクールバスの利用ができず、保護者が毎日送迎しています。保護者の負担たるや相当なものです。そんな保護者の想像を絶する努力でようやく医療的ケアのある子どもの通学が保障されているのが現実なのです。


 何人もの子どもたちが医療的ケアを理由に地域の子どもたちと育つ環境を制限されたり、何人もの保護者が働く権利を侵害されたりしてきたのに何もできず、歯がゆい思いをしてきた中で、「医療的ケア児支援法」は未来が変わるかもしれないという一筋の希望の光でもあります。


 しかしながら、まだまだ現実に改善が実感できるようなことはあまり多くありません。国や自治体の責務は明文化されたものの、罰則規定はなく、どこまで子どもたちの生活が改善していくかは未知数です。


 からふる乙訓の究極の理想は、どんなに重い障がいやどんなに多くの医療的ケアがあっても、希望する保育園や幼稚園、学校、学童保育所などに地域の子どもたちと同じ条件で通うことができ、かつどこにいても個別の配慮やケアを受けられ、どこに通っていても専門性の高い保育や教育が受けられる世の中になり、我々の役目が終わることです。

 福祉、教育、医療、すべてがうまく連携し、どこにいても普通にみんなが必要な支援を受けながら同じ景色を見て育つ世の中が一日も早く来てくれることを願います。





 

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